「70's 本牧」
18歳の僕には、日本の中のアメリカである米軍基地、施設は憧れだった。
横須賀はちょっと遠いが、本牧なら行けるし、雰囲気だけでも感じたい。大学に落ち浪人生活を覚悟した頃、気分転換に横浜に向かった事を思い出す。
60年代の一番ヒップな場所。東京でビートルズが流行れば、本牧はストーンズだった。東京で膝上25cmのスカートが流行れば、本牧は30cmだった。
東京よりも先に行く事、突っ張っていた。グループサウンズ全盛時、あのスパイダーズ、テンプターズが本牧にあるバンドを観に行った。そのバンドこそ伝説のゴールデンカップスだ。アイドルグループサウンズと思ったら大間違い。アメリカ兵を相手に本場のR&Bをやっていた。みんなリードギターをやりたくて、じゃんけんで決めた。全員2世という事になっているが、ホントは全員ではない。というのは有名なエピソード。アメリカナイズされた刺激的で格好良い場所。それが本牧。
話を元に戻そう。とにかく何かあるだろう。行くだけ行ってみよう。最寄り駅もない本牧。地図を片手に目的もなくウロウロ歩いた。
夕方だったので、ネオンも灯ってないし、怪しさもないし、人もいない。米兵相手の洋服屋やカフェを探したが何もない。
ゴールデンカップ、リキシャルーム、アロハカフェ有名な酒場も開店前で静かな佇まい。田舎者の若造には、本牧は場違いだった。
疲れ果てて、カップルであふれた山下公園を一人で歩いた。ハマの風にあたり、海をボーっと眺めていた。横浜初体験の僕にはこういう名所が似合っていた。本牧はディープすぎた。
ベイブリッジもランドマークもみなとみらいのネオンもないシンプルな公園。氷川丸が僕にやさしく話しかけてくれた。港からのぞくマリンタワーとニューグランドの灯りが僕の心を癒してくれた。