今世界で最も美しい声を持つ男性シンガーを選ぶとすれば、カエターノ・ベローソである事に異論はないと思う。その色っぽく両性的で美しく甘い声を生で聴けた幸せは、一生の宝物となるだろう。3年前の東京国際フォーラム。ステージまではかなり距離があり表情までは伺い知れなかったが、張りつめた空間に響く彼の声、演劇的なアクションは聞き手のすべてを刺激した。筋肉はゆるみ、大脳は刺激されアドレナリンが出っ放し状態。ウワサに聞いた通りの神がかり的なライブパフォーマンスだった。彼のことをあまり知らない僕の相方も感動しっぱなしだった。
この時彼は還暦を迎えていた。彼のアルバムで愛聴盤をあげろ。と言われると非常に難しい。40年以上にわたりいろんな事に挑戦し続け、今も現役でアヴァンギャルドなアルバムを出し続けている彼の1枚となると…本当に悩む。
僕も友人にカエターノ30枚組のBOXを借りて楽しませてもらった。しばらくカエターノ中毒だった。自分が好きな曲をチョイスしマイベストも作った。
僕がカエターノの存在を知ったのは、1994年に出たFINA ESTAMPA(粋な男)だ。
それまでは、特にラテンに興味はなかったしボサノヴァを少しかじった程度でポルトガル語の歌、ブラジルの音楽に思いいれはなかった。だから聴いた時の感動もそんなになく、不思議な感覚だった。それから数年聴く度に好きになっていった。今ではカエターノなしでは生きていけない体になってしまった。彼が僕にラテンの素晴らしさを教えてくれた。
FINA ESTAMPA(粋な男)タイトル通り次から次へと飛び出す粋な男。ラテン音楽を全曲スペイン語で歌っている。優美で静かな曲が続き、カエターノの官能的な美声を堪能できる。初めての方には、とりあえずこのアルバムから入る事をおススメします。
必ずボディーブロウのように効いてきますよ。