昨年愛聴盤で紹介した現在世界最高のソングライター、カエターノ・ベローソ。彼の美しく、哀愁に満ちた世界観。このブラジル人歌手の根底に流れているのは、イタリアである。1997年、イタリア映画監督フェリーニの故郷でフェリーニと妻のジュリエッタ・マッシーナに捧げるコンサートを行った。
少年時代の体験でカエターノは、「私の人生形成の上で最も決定的だった出来事のひとつは、故郷の映画館で日曜の午前中に上映されたフェリーニの『道』だった。それを見た私は、一日中泣きっぱなしで昼食をとる事もできなかった。」と語っている。
それ以来彼はイタリア映画に敬愛の念を抱いている。
イタリアでもカエターノの人気は高く、彼の歌はイタリア人に愛されている。相思相愛である。この時のライブは、日本でも発売されている。機会があったら聴いてみて下さい。余談ですが、カエターノがステージで着用しているブランドは、イタリアのロメオ・ジリである。(バブル期イタリアンブランド全盛時代、個性をはなっていた。)
『道』フェリーニ作品の中では、一番わかりやすくシンプルな内容。イタリアってやっぱり人間くさいっていうか、人の心を揺さぶるような演出が上手いんだよな。ストレートな人間愛。家族愛。わかりやすすぎ。
僕がこの映画を観たのは、30歳位の時だったかな。年齢的にも良かったのか、観終わった瞬間呆然として、暫く動けなかった。なんて言うんだろう、世の中の景色が急に変わったように感じた。本当に。カエターノもそうだったんだろうなぁ。同じ思いをした人が世界中に沢山いると思う。
カエターノがこの映画に感銘を受け、今の音楽人生に大きく影響を受けているように、この映画に衝撃を受けた富山の一青年も、今経営しているイタリアンファッション店の精神に、フェリーにの幻を重ねているのかもしれない。