「来るつもりなかったんだけど、たまたまHPでバニー見たもんだから一言言ってやろうと思って来ましたよ。」
色黒の顔に独特のヘアースタイルの男。彼はいつも突然現れる。
洋服を見にくるのか?それとも僕を茶化しに来るのか?当店が営業しているかどうか確認しに来るのか?
にやけながら「店辞めたのかと思った!」「僕が来たら前のドア閉めて貸切にしてよ」
「客の事を客と思わない、こんな店ないよ!」等、もう言いたい放題である。
でも憎めない。僕も全く気にしない。気も使わない。そんな間柄。彼とはもう20年位の付き合いだ。彼は保険屋さんだから、スーツは戦闘服だ。
「アルバーノのスーツ着たら、他の店のは着られませんよ。長谷川さんが選ぶんだから間違いないですよ。」「うまくいっているのは長谷川さんの店だけですよ。」仕事柄か性格なのか人を持ち上げることは天才的だ。いつも目が笑ってるけど…。
確かに当店のスーツ以外着ているのは見た事がない。彼は4年に一度のペースでスーツを新調する。自称オリンピック男。「前のものでいいですから、安くて掘り出し物ありますか?」僕も彼に合うサイズを在庫から探す。ボリオリ2着、決めてもらった。彼はブランドには特にこだわらない。アルバーノのスーツが彼の仕事に対するモチベーションを上げるのに役に立ってくれればいいと思う。なかなか20年に及んで当店のスーツを着続けてくれるお客さんは多くない。
お客様と当店の信頼関係。4年に一度でも、5年に一度でもいい。プロパーでもセールでもいい。スーツを買おうと思った時に、真っ先にアルバーノが頭に浮かんでくれれば、スーツ屋としては喜びである。
彼とはこういう関係をこの先も続けていきたい。
「あまり来たくないけど、今度来るのはまた4年後にしとこうか。でもその時長谷川さん生きてるかねぇ。」と言って彼はスーツを引き取っていった。
彼のリクエストに応えての今日のブログです。