クリスマスも終わり、2012年も残りわずか。皆様如何お過ごしでしょうか?
富山はホワイトクリスマスでした。白の世界。雪の世界。窓の外は白銀のメロディ。部屋の中では、心温まる時が流れました。クリスマスケーキに灯るろうそくの炎を見つめ、今年あった事に想いをはせ祈り、感謝しました。
サイモン&ガーファンクルの「スカボローフェア」、「7時のニュース/きよしこの夜」を聴きながら…。「きよしこの夜」が始まるといきなり殺伐としたラジオのニュースが流れだす。この意表をつく展開。ポールサイモンらしいなぁ。
12月クリスマス、雪、年の瀬、無性にサイモン&ガーファンクルが恋しくなります。12月じゃなきゃダメなんです。彼らの美しいハーモニーが僕を1974年の12月にいざないます。その年洋楽に目覚めた僕は、ビートルズに始まりいろんなミュージシャンと出会いました。ある冬の寒い日、このレコードを買いました。少ないレコードライブラリーに仲間入りしたサイモン&ガーファンクルにのめり込みました。
「ミセス・ロビンソン」「エミリーエミリー」「ボクサー」…。降り積もった新しい雪を見ながら、部屋の中ストーブにあたりながら聴くサイモン&ガーファンクルはいつでもそばにいて、僕に静寂の音「サウンドオブサイレンス」を歌ってくれました。心に響く音楽との出会い。当時の自分、時代背景。その相互関係が心の深いところに刻まれているのかな?
それから40年近くたちますが、12月になる度にサイモン&ガーファンクル症候群になります。「水曜日の朝、午前3時」、「4月になれば彼女は」、「フランクロイドライトに捧げる歌」。いいタイトルだよね。メロディも美しい。4月になれば彼女はやってくるそうだ。春への希望をのせて。「59番街橋の歌」、「地下鉄壁の詩」、「ニューヨークの少年」。フィーリングルーヴィー!まだ見ぬニューヨークへの想い。ロックフェラーセンターのクリスマスツリーにイルミネーションがともる時、人の心にも小さな明かりが灯る。
そして、今年は自分の無力さを感じた年でもあった。絶望、喪失、不安を経験し、そこから這い上がろうと努力している人が沢山いる。同じ日本にいても何もしてあげられない。年末になると僕が聴くのは「第九」ではない。12月はサイモン&ガーファンクルを聴こう。そこにはきっと真実があり、勇気を与えられるものが厚く豊かに横たわっているはずだ。
特にこの歌を聴きたい。今までは自分の為だけに聴いていたけれど、今年からは2011年3月11日の事も想い、この歌を聴く事にしよう。決して忘れない為に。被災者の方々に小さいかもしれないけど、橋を架けたい。明日に架ける橋を…。
*生きることに疲れはて みじめな気持ちで
ついに涙ぐんでしまう時 その涙を僕が乾かしてあげよう
僕はきみの味方だよ どんなに辛い時でも
頼る友が見つからない時でも
荒れた海に架ける橋のように
僕はこの身を横たえよう
荒れた海に架ける橋のように
僕はこの身を横たえよう
(Old friends-simon&garfunkel より)
僕が店を始めた20年前から気になって見続けているショップがあります。行ってみた事のある方も多いと思いますが、その店は東京・南青山、骨董通りの裏にひっそりとあります。
そこは、当店も扱うフェリージを輸入するフィーゴの第一号店「La Gazzetta 1987」です。その場所でスタートしたのが、店名からでもわかるとおり1987年です。洋服が整然と並ぶセレクトショップとは全く違う趣味性の強いセレクトショップ。今の店舗は7,8年前に新しくなりパープルを基調にしたポップで斬新な空間になっています。僕が最初に訪れた20年前から大人の隠れ家的な雰囲気にあふれていました。それから何度かリニューアルしています。ウィンドーの意表をつくディスプレイだけでも見ごたえがありました。店の中央には真っ赤なイタリアのヴィンテージのオープンカー。イエローのポップなソファや飛行機の模型、レコードや洋書…。オーナーの趣味性全開の贅沢な世界は、僕の理想とする憧れのショップでした。フェリージの見せ方等、色々参考にさせていただきました。
実は創業以来このショップの上の階にあったフィーゴの事務所がこの秋移転しました。長年にわたりフェリージを仕入れに来て、この店をのぞく事が一つの恒例行事のようになっていたので複雑な思いです。最近この南青山・骨董通り近くに代理店さんの数も増えました。だから、La Gazzettaをのぞこうと思えばいつでも行けるんですが…。La Gazetta1987、これからも独創的な店作りのモデルであって欲しい。僕にとっての夢のショップでいて欲しい。
フィーゴ、La Gazettaの店のストーリーと当店の歩みをいつもだぶらせています。
「YELLOW MAGIC Orchestra」
この前NHKでYMOのスタジオライブをやってました。久し振りに聴くYMO。シンプルなステージで黒っぽい衣装にシックなライティングの中もくもくと演奏する3人に鳥肌がたちました。演奏の間に彼らの好きなとぼけたコントをはさむというギャップが面白かったです。しかし、今思うとやはりスゴイ3人です。世界のサカモト。ジャパニーズポップスのマエストロ細野。デザイナーでもあるサディスティックミカバンドのユキヒロ。どういう経緯でこの3人がテクノを志したのか?それは判らないにしても、何に影響されたかはこのブログの最後に予想してます。
やはり成功を勝ち得た3人は、オヤジになっても恰好良いですね。3人共大好きですが、特に教授の雰囲気は大好きです。僕も髪の毛を真っ白に染めようかな。音楽的には最近の細野さん、いい音楽やってますよね。さすがです。
YMOの「テクノポリス」、「ライディーン」がテレビコマーシャルで使われて、大ヒットしたのが80年。その後社会現象的に大ブレイクしたのは周知の通りです。
今日の愛聴盤。「YELLOW MAGIC Orchestra」。1979年に出たデビューアルバム。実は僕はこの実験的なデビューアルバムを発売されると同時に買いました。これは僕の自慢です。(たいしたことではないって思われるかな。)今はビッグな3人ではあっても、当時は話題にはならなかったと思います。ラジオで紹介された「東風」に感動し、すぐレコード屋に走ったのを覚えています。大学浪人時代です。周りの音楽好きに話してもわかってもらえませんでした。それがこんなに大ヒットするなんて、誰が予想出来たでしょう。その後は当然自慢しまくりですよ。「テクノポリス?ライディーン?俺なんかYMOが出た時から聴いてんだよ。1stアルバムの方がいいよ。」
この前のスタジオライブでも結構1stアルバムからやってましたが、売れた2ndアルバムより僕はこの1stアルバムが好きです。「ファイヤークラッカー」、「コズミックサーフィン」、「東風」、「中国女」等々いいです。原点ですよ。
でもこの1stアルバムがはずしていたら、今のYMOはなかったかもしれません。多分僕と同じく彼らが売れる前にこのアルバムを買った事を自慢している人、沢山いるでしょうね。
調子にのって?自慢話続きます。中学の時ドイツのバンド、クラフトワークの「アウトバーン」というデビューアルバムを発売と同時に訳もわからず買いました。その数年後クラフトワークは「ロボット」(ディスコダンスとして流行りました。)という曲が世界で大ヒットし、彼らはテクノミュージックのトップバンドになるんです。
おそらくYMO結成に大きな影響を与えたのがクラフトワークだと思います。たまたまだとは思いますが、そんなテクノ好き人間でもない僕が、この歴史的2バンドのデビューアルバムを発売と同時に買っている。吸い寄せられるように。僕のようなアナログ人間が、近未来的テクノ音楽に先見の明があったとすれば…神様のいたずらと言うのはオーバーでしょうか?
ELLA FITZGERALD & LOUIS ARMSTRONG 「ELLA AND LOUIS」
いよいよ寒くなってきました。寒くなれば気持ちいいのはそうお風呂ですよ。売り上げはともかく頑張った土日の疲れを癒してくれるのは、家風呂より銭湯です。日帰り温泉、スーパー銭湯は勿論ですが、近くの銭湯もいいもんです。最近のお気に入り「いなり鉱泉」へ相棒と行ってきました。あのアルバーノ北海道支店長もごひいきの銭湯です。風呂の種類も多く飽きさせません。僕の一番のお気に入りは炭酸泉です。これは珍しいでしょう。炭酸が出ていてお湯は熱くないんですが、やさしい刺激がジワジワきて最高です。スカっと爽やかな気分にしてくれます。ラムネの瓶に入っているビー玉の気分かな。庭園のある空間でステンドグラスがまたいい雰囲気をだしています。十分温まった後は露天の岩に腰掛け放心状態になったり、ボーっと洋服の事を考えています。(仕事熱心!)小さな銭湯は廃業していくところも多くてさみしいですね。日本の文化として頑張って欲しいです。10数年前行きつけの銭湯があった頃、そこの主人や常連客と世間話をするのが楽しみでした。やっぱり銭湯は近所のコミュニティとして必要だと感じます。イタリアのBAR(バール)と同じですよ。近くの人間が集まる社交場。そこでエスプレッソを飲みながら小さな話題で盛り上がる。いつもの顔を見るだけでホッとできる。そういう温かい人間関係。小さな幸せがイタリアでは今も存続しているんです。
さて、今回の愛聴盤。寒い時こそHOTなデュエットでいきましょう。ご存知の方も多いであろう。エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングのデュエットアルバム「ELLA&LOUIS」。エラの優しく深みのある声とサッチモのガラガラでドスのきいた声。ブラック2人の個性のぶつかりあいが不思議なハーモニーをうみます。贅沢でいい相性です。サッチモの温かい声、ニューオーリンズ調トランペットには癒されてきました。8曲目「アラバマに星落ちて」。僕の大好きな曲です。二人のデュエットは最高です。体が寒い時、心が寒い時このアルバムを聴いて下さい。12月の寒い夜空に星が満面に輝く幻想的な日。エラ&ルイの「アラバマに星落ちて」を想い、小さな幸せを感じて下さい。
来秋冬のプレコレクションが始まっています。横浜のブログの時に少し書きましたが、ボリオリのプレコレです。会場にはジャケット・スーツがメインではありますが、シャツ・パンツ・ニット等トータルなアイテムで「ボリオリ」の世界観が広がります。10年前からは想像もできない光景です。「DOVER」、「COAT」の新しいカラー、柄物、定番物を順番に見ていきます。僕の足が止まったのは「COAT」のコーナーでした。日本に入ってきた時に一目惚れし、売り続けてきました「COAT」。今までいろんな色・柄をチョイスしてきましたが、全てコットン素材でした。しかし、なんと目の前にウールの「COAT」があるではありませんか!数か月前ボリオリの担当者の方が来店された時に、「ウール素材のCOATもそろそろ作って欲しいなぁ」と強く要望したのが届いたのでしょうか?
ガーメントダイの先駆者ボリオリは「COAT」については、ずっとコットン素材にこだわってきました。が、ついにウール素材も洗ってくれました。プライスもいい感じ。う高級素材(カシミア等)を洗ったKジャケットにウールは限定していました。「COAT」のスーツも来春の目玉ですし、ウール素材の「COAT」の登場は「COAT」の世界をさらに広げてくれそうです。
一つ残念な報告もあります。ボリオリクラシックスーツの最高峰である「Hモデル」がなくなります。ファクトリーブランドとして、上質なクラシコサルトリアを作る事はステイタスであったはずです。そのモデルを切り捨てる事は歴史あるファクトリーからの脱却であり、ブランドとして生きていくという宣言でもあります。少し淋しい気持ちです。確かにボリオリはジャケットで大成功をおさめました。世界的に認められました。偉業ではありますが、ボリオリの長いファクトリーの歴史を考えると現会長(4代目)はどう思っているのでしょう。僕達もスーツのボリオリとして、SやHモデルをドロップは7か8、パンツはワンタックかノータック等細かく選んでオーダーしていたことが懐かしいです。その頃とは違い今は高級スーツも厳しい時代です。メンズクロージングの世界も変わってきています。古いクロージングの体質に革新を取り入れ、リードしてきたのがボリオリなのです。だからこそその古い体質とお別れする事は必然なのでしょう。何度も書いていますが、モードとクラシックの間の微妙なスタンスに生きるボリオリ。そのワンアンドオンリーのボリオリのポジション(スーツ、ジャケット中心)の中で、メンズファッションのサプライズに挑戦していって欲しいと僕は強く願っています。
ちなみにスタンダードなクラシックFモデルは、「D」と名を変え、スタイリッシュにマイナーチェンジします。最高級はなくなっても、アルバーノが僕がこよなく愛すこのモデルは健在です。庶民的であれどもスタイリッシュなこのモデルは、当店の定番として来秋も店頭に並ぶし、作り続けて欲しいボリオリの最後のクラシックスーツです。