「ヨーロッパの路地裏」という番組が好きだ。斉藤由貴のホンワカしたナレーションも良い。この前はロンドンの路地裏、ノッティングヒルをやっていた。古いヨーロッパの路地裏にはドラマがある。何代も続く店とそこに長年通う人達との固い絆。シンボル的カフェでは毎日喜怒哀楽があり、いろんな人が思い思いに自分の時間を刻む。大きな広場にはマーケットが出て、意外な宝物と出会える。一本の通りが作る大きなコミュニティ。ブランドショップや大手チェーン店が立ち並ぶ華やかな表通りとは対照的。違った魅力。
毎回番組の終わりに言うセリフが好きだ。
「化粧をした表通りに真実はない。路地裏にこそ人生の全てがある。」
僕達の商店街も昔は表通りだった。もう過去の話だが…。大型駐車場を備えた郊外のショッピングモールとその周辺ロードサイドに表通りが移って久しい。
大都会はもちろん表通りはどこも同じだ。勝ち組チェーンストアが手をつなぎ通りを占領しているだけだ。今の社会はその状況を、その利便性を歓迎している。街だけではない。全てのものに利便性を求める時代だ。今はいいかもしれないけど、将来それが味気なく感じる時が来ると思う。覆水盆に返らず。本物、大切な物が知らず知らずに失われているのは確かだ。
話はそれたが、僕達の街も昔の表通りの賑わいを取り戻そうと、行政と手を組み努力はしている。それを望む気持ちも僕の心の片隅にはある。
でも、時代は変わった。ムリをする必要はない。この番組を見て思った。
僕達の街が目指すのは、路地裏だ。人間の温かい息づかい。ヨーロッパの路地裏の歴史には到底かなわないが、原点に返った人と人とのコミュニケーション。この街を愛してくれる人達が生活をエンジョイできるようなコミュニティを作ろう。時間がかかってもいい。小さな物語が始まり、それが大きく長く続いていく。日本にひとつしかない、僕達だけのオリジナルな路地裏だ。
それは、長年商いを続ける僕達のこだわりとストーリー、新しく街にできるショップ、施設の未来のストーリー、そして主役である路地裏を愛してくれる人達のストーリーの合作である。
昔からの老舗やライブハウス、ミニシアター、寄席、こだわりの飲食、これから出来る公共施設等。点と点が一本の線でつながることだ。
街は死なない。人の息づかいがある限り。古い頭の僕だけど、夢にはしたくない。まずは最初の一歩。僕の店からでも、もっともっとこだわっていこう。例えば洋服だけでなく、カフェも復活させてみようか。とにかくアルバーノからコミュニティを作ってみよう。
「化粧をした表通りに真実はない。路地裏にこそ僕達の夢と未来がある!」