完成品、傑作品、人気商品を探し集めて売ること。そうすることが僕達物売りの理想なのか?ビジネスとして、それは自然な方向かもしれない。
でも、オーナーの目指すものは人それぞれだ。新しいもの、無名なもの、未完のものを育て、売ることに生きがいを見出す。
それは、イチかバチかのギャンブルだ。しかし、信念を持ってやってきた。体に染みついている。
きれいごとを言っても仕方ないが、これが僕の性分。食べていく糧だ。
ボリオリやフィナモレの様に気に入り、育てた(一生懸命勧めた)ものが、大ヒットする。嬉しいことは嬉しい。でも、それを期待していた訳じゃない。人気者になった時、完成された時、ひとつ言えることがある。そのブランドをとりまく周りの環境が変わることだ。周りの環境が変わることで、そのもの自体がなんらかの化学反応?を起こす。そうなると、自分達がマイペースで扱っていたことが、コントロールできなくなる。
今回 GAIOLAのキャッチコピーを「未完成の美」とした。GAIOLAの服が完成されてないと言いたいんじゃない。ナポリの服の本質をろくに知らない僕が、そんなこと言えた立場じゃない。長年そこに身をおいたオーナーが作り上げたGAIOLA。その美しさにとりつかれた僕がいる。
当店が長年扱い続ける我が心のボリオリ。100年の歴史を刻んで、DOVER、K.JACKET、COATの傑作品を生んだ。ボリオリは地位と名声を築いたが、失ったものもある。それは、ファクトリーブランドというスタイル。先に書いた化学反応が起こった。
今僕がGAIOLAに魅力を感じるのは、ファクトリーブランドとしての機能。ファクトリーって自由なんです。細かいこだわりに応えてくれる。ワガママになれるし、クリエイター気分にもなれる。ファクトリー、工房、小さくなればなるほど、僕達の声が届く。
GAIOLAは、今いろんなスタイルを提案している。新しいモデルで挑発してくる。
「こんなモデルはどうだい。気に入ったらトライしてみてくれよ。」
GAIOLAに絶対的なスタイルはない。僕達はいろんなニーズを考えながら、オーダーする。
「あのお客様は、このモデルを気に入っているから、このあたりの生地で。」
僕は僕の独断で、店長オススメモデルを選ぶ。GAIOLAというファクトリーブランドをいろんな角度から、皆さんにお見せしたい。
オーナーペトリロ氏の経験値の集大成である。まだ、生まれてから5~6年の若さだ。完成されなくていい。傑作品を期待する訳じゃない。
長く根づいていくには、地道なアプローチだ。少しずつこのブランドの理解者が増えていくのがいい。
失敗はあるかもしれない。それも、ギャンブルだ。
ただ、このブランドとは50対50(フィフティーフィフティー)の関係でありたい。マイペースで静かに太く長く…。