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2015年02月23日

「ひとり」さすらいの洋服旅

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ムーレーのダウンコート、ガイオラのチェックジャケットにザノーネのタートルニットに身を包み、彼は今シーズンもやってきた。春の訪れと共に。さすらいの洋服旅。人は彼をスナフキンと呼ぶ。
「人ごみが嫌いなんですよ。」新幹線で盛り上がるだろう3月前の静観な季節を選んだ。
前回(昨年の8月)に来店した時予約したデ・ペトリロのスーツは、まだ入荷してなかった。
「いや、いいんですよ。また入ったら連絡下さい。」
彼は、アルバーノと富山の空気を気に入ってくれている。とは言え、東京からわざわざ4日間来て下さるんだから、黙ってる訳にはいかない。僕も出来る限りの事はしたいし、モノも用意しておきたい。仕掛けは揃った。スナフキンシートも用意した。(ただチェアを置いただけだが。)でも、彼は彼の間合いでペースでゆっくりと洋服を見たり、試着したり、雑誌を読んだりして過ごす。自然体だ。富山ブラック(ラーメン)も、もう慣れたようだ。
今回 用意した仕掛けの中で彼のターゲットになったのが、前回のブログで取り上げたナポリのサルト。意外だった。シングルスーツとダブルのジャケットのサンプルを取り寄せておいたが、彼の魂は完全に奪われた。
「今回の収穫だ。」13㎝ラペルのでかいダブルの襟。狭いVゾーンにウエストの絞りがセクシーだ。客観的に見ていた僕にも彼のゆるんだ表情に心の中がはっきり映った。言葉はいらない。
何度も何度も袖を通すスナフキン。僕もとりこになった服だけにすごくうれしかった。初めて共感してくれた人だ。新しい挑戦に背中を押してくれた。
スナフキンは自由な人。海外にも相当行ったそうだが、最近は富山が安息の地だ。僕もこんな風に解放されたいと思うことがある。というか、根本的に「ひとり」というものが好きなんだ。そんな人も少なくないと思う。
一年に数度フラッと旅に出たいなぁ。目的は決めるもいいし、決めずに出るのもいいだろう。お気に入りの本、音楽、宝物をバッグに詰め、モチロンお気に入りのジャケットとコート。飛行機よりも電車かな。いろんな街をあてもなくさすらう。とにかくいろんな街の空気を感じてみたい。
当店を訪れる旅人が、ここ数年すごく増えた。有難いことだ。
そんな旅人を温かく迎えられるような店にしたい。ここ富山で相棒と二人でやっているささやかな店。お客様には大変不便をおかけてしてますよね。可能であれば、ご来店予定日をお知らせ下さい。
何度か書いていますが、全てはお客様のペースでいいと思います。ただ、ご要望があればおっしゃって下さい。出来る限りのことはいたします。
アルバーノリビング。ゲストスペースの構想も進んでいます。早くしなくちゃね。モチロン富山の方にもドンドン利用してもらいます。
一番楽しむのは僕かな。道の駅ならぬ「服の駅」なんて看板あげようかな。
今年も日本中の洋服旅の方と出会えればうれしい。そしていろんな夢を語りましょう。

2015年02月10日

展示会-ある服との出会い-新しい挑戦

先週は展示会出張があり、秋冬の商品構成、ビジネス形態の変化等、いろんな事が頭の中で交錯した。
今まで付き合ってきたブランドの今後。新しい話題のブランドからの誘惑。NEWブランドとの出会い。
いまだ整理ができていない部分も多いけど、時は待ってくれません。
ある程度イメージを描いて臨んだ展示会。思ったように事は運ばない。しょうがないというあきらめと苛立ち。
セレクトショップというビジネススタイルと、ブランド無視して我が道をいく勇気。自分本位とお客様目線。年に2度はそんな自問自答を繰り返す。
何年経験を重ねようが、慣れることもなければ、そこに真実もない。自分の不安定な確信と身勝手なバランス感覚に頼るしかない。楽しむ事はモットーだが、遊んでる訳じゃない。
モチロン主役はお客様であり、いかにスリルとサスペンスを楽しんでもらえるか。その為にどんなネタを仕掛けられるかが腕のみせどころだ。
「あの人気ブランドは扱ってないのですか?」 「前に買ったのが気に入ってるんですが、あれはもう入らないのですか?」 皆様の意見を全て受け入れることはできない。
ネットショップをやる予定もないし、どこも扱う人気ブランドとの付き合い方には慎重になる。今回もそこが悩みどころだ。
東京へ着いて一番に駆けつけた代理店。新しいブランドの見極めだ。とにかく新しいものは常連ブランドより、先にみなければならない。仕入れのワクを作ってないから。うれしい誤算を期待する。電話で聞いてたけど、実際みてみないと。日本人モデルに作り直したそう。
「?」 正直トキメキは感じなかった。プライスがプライスだからしょうがないか。
試着しながら、横のハンガーに並ぶジャケット、スーツが気になっていた。ナポリのフルハンド。サルトリア。当店には敷居が高いのはわかっている。小さいサイズがあったので、試しに羽織ってみた。
「ウ…。」(しばしの沈黙)。言葉が出ない。鏡越しに映る自分のジャケット姿にフリーズ。
「ざわ、ざわ、ざわ…。」血の流れがスピードアップした。
「なんだこれはっ!」これがナポリフルハンドのスゴさか!
「違う、違う、違うぞ…。」これは素晴らしい。ナポリサルト、初めて羽織った訳じゃない。でも、今まで大きいサイズばかりでピンとこなかったのか。
今まで着てきたものとは明らかに違う。興奮状態でプライスを聞いた。
「ウ~ン。」確かに安くはない。僕の目線からははずれている。
「でも、冷静に考えてみろ。ナポリのフルハンドの服だぜ、としたらそんなにはずれているか?今売れているイタリアンクロージングブランド、少しいい生地を選べばその位はするぜ。メジャーなナポリサルトのプライスと比べてみろ。安くないかい。自分のカラをヤブれよ。変わることも必要なんだよ。」
どこからともなくそんな声がした。
ここ数年、ようやくナポリサルトの雰囲気をデ・ペトリロで味わった。ただ、それは本物のサルトと言えるものでは当然ない。サルトへの入り口に到達したところだ。それはそれで、僕の目線に入る大きな宝物だ。
でも、その雰囲気を味わってしまうと、もう少し中をのぞいてみたくなるものだ。上を見ると限りなく高いだろう。しかし、この服との出会いが、僕を一歩ディープな世界に手招きしているように感じた。「一期一会」なのかな。
その後、昨秋から話題のあのブランドを見に行った。メンズファッションに革命を起こしたあの人がデザインするんだもの。僕が嫌いな訳がない。流石いい線をついている。
先のナポリサルトの一着とプライスがほぼ同じくらい。どちらも全く違う魅力がある。
ただ、今 新しい挑戦をするとしたら話題性に走るより、無名のサルトに賭けてみようか。

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