HOME > Blog
2014年02月04日

アルバーノ的プライス考・2

むかし、むかしの物語。80年代からのバブルが終わっても、日本にはイタリアンデザイナーブランドの残像は残り続けた。バブルまっただ中に富山に戻り、商いを始めた僕は、その一部始終をみてきた。おびただしい数のイタリアンデザイナーブランドは、徐々に淘汰されていった。ポールスミスやセレクトショップ(御三家)が台頭してきた。混沌としたなか地道に足固めをしたのが、イタリアンファクトリー。ゼニア、ヴェスティメンタ、レダエリ…。イタリアンデザイナーブランドは雲の上の存在になり、手が届かなくなった。ファクトリーならば手が届く。それでも、そんな簡単に買える代物ではなかった。
その頃からイタリアかぶれしていた僕も、今と変わらないプライスのメイドインイタリーにこだわっていた。
2001年にLEONが創刊され、「ちょいワル」がブームになるが、まだまだイタリアモノは高かった。80年代からのイタリア服の歴史の中、本当の意味でメイドインイタリーが親しまれだしたのは、5~6年前からだと思う。
それを語るうえで、このブランドを出さない訳にはいかないだろう。またかと言うなかれ、ボリオリだ。ジャケットブームの立役者であると同時に、日本にメイドインイタリーを浸透させるきっかけを作った。
ボリオリから登場したアンコンジャケット。当時ハンプトンといった。薄い芯、パット無の一枚仕立て。プライスは10万強。一部で話題になったが、そんなに売れた訳じゃない。
翌年の春、ハンプトンの進化バージョンが出た。ドーヴァー。プライスは確か83000円。業界がざわめいた。雑誌媒体が一斉に注目した。メンズファッションの風向きが変わった。革新的ジャケット登場とドーヴァーはとりあげられ、あれよ、あれよと売れだす。商品は店頭、ネットショップから消えた。それまでの重厚なテーラードのイメージをくつがえす軽快さ。流れるようなスタイリングの美しさ。何よりも衝撃的だったのは、そのプライス。代理店からのアンサーが、一律83000円。当店は最初からボリオリを直輸入していたので、なんの驚きもなかった。「いいとこついてきたじゃない。」くらい。
当時のボリオリは、イタリアンファクトリーブランドの一つとして頭角をあらわしていた。その前に、カンタレリ人気もあった。ただ、ほとんどのブランドがジャケットで10万円強、スーツで13~14万円が相場だった。そこに一石を投じたボリオリジャケット、8万円台。ボリオリの名は日本中に広まり、一般層にもイタリア服が身近な存在になった。10万強のドーヴァーだったら、こんなに反響はなかったはずだ。
イタリア高級服の世界はまた別ではあるが、イタリア服の敷居をいい意味で下げてくれた。それ以降いろんなイタリアンブランドが、ボリオリのブライスを基準に考え始めた。ボリオリは、それくらいプライスが重要であることを証明してくれた。新しい層を開拓するための大きなファクターになった。
それまで自由気ままに値付けしていた当店も、代理店からドーヴァー・ホップサックに限り、83000円のプライスを統一するように要請された。その時は正直もう少し安くてもいいんじゃないか。と思った。
ただ、僕が嬉しかったのはイタリア服のプライス目線が、自分に近づいたことだった。ボリオリが売れたことも勿論だが、プライスが評価されたことが満足だった。

2014年02月01日

アルバーノ的プライス考

僕は人一倍プライスにこだわる。どんなに素晴らしいものでも、気にいったものでも、自分目線からはずれるものは扱いたくない。買おうとは思わない。頑固だ。いろんな人がいるんだから、店のセレクトも自分目線にこだわる必要はないのかもしれない。だから、すごく高額な商品からリーズナブルなものまでバリエーション豊かに品揃えする店が、日本ではある時から増えてきた。モチロン高級店、安売り店と形態もある。僕が考える理想の店。それはクオリティとプライスのバランスがとれていて、プライスの幅が狭く、沢山の種類のものがディープに並ぶ。高級店でもなく、安売り店でもない。高い安いはお客様が決めるものだ。イタリアものは高いというのが相場だ。試着されて、「これいくら?こんなイタリア製がこの値段って結構安くない?!」
これが僕の理想。
日本で売られているインポート品には二通りある。完全に代理店がプライスをコントロールするものと代理店から下代で仕入れたり、直輸入によって原価で仕入れて、店側がプライスを決定できるもの。前者のものも当店は扱っている。ただ、僕の理想は後者であり、プライスも自分の目でジャッジしたい。
ボリオリ、フィナモレ、シーラップ…いろんなブランドを直輸入してきた。どんな世界でもブランドが有名になれば、プライスは固定してくる。常識だ。でも、そんな名前が通ったものだけがいいものなのか。プライスがはっきりしているものが安心できるのか。そういうものに悪いモノはないだろう。でも、まだまだ値がつかないお宝は眠っているし、これから登場するかもしれない。
そんなお宝の探検隊でありたいし、自分の目線で値付けすることを楽しみたい。生きがいにしたい。値付けされた有名ブランドばかりじゃ夢がないじゃない。
僕はビジネスの成功者になれるような器じゃない。目線は高くない。単なる小市民。
だから、プライスにはこだわる。小市民的イタリアンショップ。そんな店も面白いだろう。
今年もHPにプライスは出さないだろう。見る方にイメージして欲しい。
クイズ形式もいいだろう。例えば、「このブランドのジャケットのプライス、ズバリ当てましょう!」(消費税抜きだよ。)当たった方には、とびきりのご褒美がまってるかも??そしたら、HPのアクセス数も増えるかな。
もちろんブツは触ってみなきゃ、着てみなきゃわからない。だから、HPだけで判断するのは難しいかな。
世の中にプライスなんてなくなってしまえばいいんだ。(また、大げさになってきたぞ。)
増税が待ってる今だからこそ、ユーロ高による値上げが待ってるインポートものだから、今あえてプライスについて考えたい。

2014年01月07日

2014

本年もよろしくお願いいたします。
年明け早々風邪をひいてしまい少々寝込みましたが、2日からの初売りもなんとか気合いで乗り切りました。
いつもの馴染みの方、遠方よりご来店の方、誠にありがとうございました。十分にお相手が出来なかったことをお詫び申し上げます。
やはり、新しいお客様との出会いは楽しいですね。
当店には、ネットショップはありません。HPにて表現しにくい商品を多く扱っております。多品種一点主義。店内ゴッタ煮状態。僕自身もどこに何があるかわからなかったりして?
でも、そんなジャングルの様な店内で宝探し気分でモノとの出会いを楽しんでもらえれば嬉しいです。
やはり、洋服は実物を見て、触って、試着して感じてもらうことが一番だと思います。
僕達もお客様との服とのドラマチックな出会いに立ち会い、喜びを共有することに幸せを感じていきたいです。
やはり、一方通行にモノを売って完結というのは、何か味気なさを感じる古い人間です。
僕達の悩んで、心を込めて仕入れるストーリー。そのモノと出会い、購入していただき、ずっと愛用していかれるお客様のストーリー。その橋渡しする時の人間同士の呼吸を楽しんでいきたいと思っております。
「いや、それでも富山まではなかなかいけないよ。」ごもっともでございます。
出来る事ならワンボックスカーでも店仕様にして、沢山の服をつめこんで1ケ月程全国行脚なんかできればいいんですけど。
「移動スーツ屋アルバーノ」。
まぁ、機会がありましたらで結構です。是非一度富山に遊びにいらして、アルバーノで服を着たおして行って下さい。
いろんな方との出会いをのんびりとお待ちしております。

2013年12月31日

2013年しめくくりのご挨拶

大晦日。今年もあとわずかで終わろうとしています。
今年一年 洋服を通じて沢山の方と親交を深められたことを非常に嬉しく思います。
誠にありがとうございました。
また、ダラダラと長い内容のホームページにお付き合いいただき、ありがとうございました。
昔から作文が大の苦手な僕ですが、文章を書くことは脳にいいと聞き一生懸命書いております。
これからもマイペースで、好き勝手にいろんなことを書いていきたいと思います。
どうか温かい目で見守ってね。
来年もアルバーノならではのセレクション、隠し玉をご用意してご期待に沿えるような店を目指したいと思います。
今も皆様が恰好良く着こなす姿をイメージしながら、来年の仕入れを考えております。
来年もホント服を着ることを愉しみましょう。
私達も一緒に愉しみたいと思います。
いろいろご意見、ご感想、ご希望をお聞かせ下さい。よろしくお願いいたします。
それでは、皆様良いお年をお迎え下さい。

2013年12月19日

災い転じて福となす?

先日一人のお客様が、黒のナイロンのトレンチコートを着て来店された。そのコートは結構シワが入っていてヨレた雰囲気だったが、そのたたずまいにトレンチのアイデンティティーが垣間見えた。
男の生き様が、注入された様な恰好良さ。
すかさず、「それ、どこのトレンチ?」と聞いてみた。
「シーラップですよ。ただ、ここで買ったものじゃないんですが。」
ちょっと間があり、「本当?マジ!イイ、イイヨ、恰好イイヨ。」
僕はちょっと興奮した。当店で売ったことのあるシーラップのトレンチでないことは、すぐ判った。ただ、当店のトレンチが一番いいという自信があっただけに、ちょっと嫉妬した。
「結構前に買って着こんでるんですよ。スゴク気に入ってます。シーラップ最高!」
僕もこれはどうだと言わんばかりに、アルバーノのトレンチを無理やり着せて、感想を求めたことは言うまでもない。シーラップを知っている男は日本では少ないし、過小評価されてるブランドであるのは間違いない。
今日は先日のトレンチ時にちょっと触れたこと。イタリアへオーダーへ行こうかって話。僕達は、代理店を通して直輸入をしているので、イタリアへ行ってオーダーをしたことがないということはご存知でしょう。
実は、今回の秋冬を最後に日本で20年以上にわたりシーラップの扱ってこられた代理店が、取扱いを辞められるんです。なんともショッキングな話。長年当店もそこで当たり前のように、莫大なサンプルに埋もれてオーダーを入れ、イタリアから直輸入していたんです。
そりゃ愛もありますよ。シーラップを見るとFさん(代理店社長)の顔がチラつきますよ。なんかさみしいなぁ。今まで扱っていた大手百貨店、セレクトもオーダーを控え扱い量が減ったことが大きな要因らしい。僕達も新作より古いモデルのオーダーを入れてもらっていた事情もありますから。やはり、新作のオーダーが少ないのは、シーラップとしても面白くはないでしょう。名だたるデザイナーの難しい注文に応え続けるかたわら、自身も時代に流されない確かなコート作りをしていた職人的真面目なメーカーです。
まぁ、時代の流れですよね。日本市場とはちょっと温度差があったのかな。
現実は現実です。さて、どうしましょう。別にシーラップというブランドの何かが変わる訳ではありません。日本で見られなくなるだけです。
なら、イタリアへ行けばいいじゃないか。行こうじゃないですか、必要なブランドなら。
シーラップ愛があるのなら。ただ、僕達はバイヤーですが、販売員でもあります。掃除もやりますよ。年明けは忙しく、ピッティやホワイト(イタリア服の展示会)には、店を休んではいけません。
オーダーを受けてくれる期間に行けばいいのです。最近イタリアへ行ってないからなぁ。シーラップオーダーツアー。本社へ行って過去のアーカイブをチェック。意外な掘り出し物が見つかるかも。
イヤ~ン、迷っちゃう。勿論新作もチェック。今年のダウンも良かったな。新定番?レディースも全部見られる?(ここ数年新作見てな~い。)素材ののせかえも交渉だ。我が相棒は10年以上前のレディースのコート(品番がわからない。)が忘れられないそうだ。確かにあれは良かった。もしわかったら、10年ぶりの奇跡の復活もあるかも。災い転じて福となす?夢はふくらむ。

◀ Back 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 Next ▶
COPYRIGHT 2010(c)Albano ALL RIGHTS RESERVED.