R&B、ジャズ、ソウル、ブルース、ポップス、カントリー…ジャンルにこだわることなく、このアーティストは自分の世界観を魅せてきた。
レイ・チャールズ。若きロック少年だった僕に、音楽の奥深さ、楽しさを教えてくれた。レイ・チャールズの代表曲「ジョージア オン マイ マインド」。誰もの心の奥にある大切な情景、郷愁。
僕の洋服屋人生を振り返るには、まだまだ早い。でも、その時が来たら心の中にひときわ大きく輝いているであろう存在、ボリオリ。
時代はカジュアル全盛の昨今。未だにスーツ屋なんか気取って、時代錯誤の戯言を言っているひねくれ者に、長きにわたり夢を見続けさせてくれる。
ボリオリ オン マイ マインド-我が心のボリオリ。イタリアブランドに憧れてから、レポーター、レダエリ…いくつもの大切なクロージングブランドとの出会いと別れがあった。宿命さ。時代の流れには逆らえない。ボリオリと出会って、何年経つだろう。長ければいい訳ではないが。
ただ、これまでのブランドのことを考えると、長く第一線で活躍し続けることが、いかに難しいか。ボリオリの功績は素晴らしい。ただ、過去は過去だ。今でしょ。これからでしょ。
ここ数シーズン、ボリオリへの想いは変わってきた。出会った頃、5年前、3年前と比べて。
特に多くを期待する訳ではない。成熟したボリオリ。風格あふれるボリオリを見て欲しい。地に足をしっかりつけた完成品。そして、語れる服であって欲しい。
「その服ボリオリのDOVERですよね。やっぱりそのシルエットは格別ですよ。」そう言われる服であって欲しい。
今秋冬もボリオリは何食わぬ顔して、クロージングコーナーの定位置におさまった。人気モデルは、堂々と存在感を放つ。やはり、この場所にはボリオリが似合う。匂いがしみついている。
「今シーズンも多くのお客様を魅了してくれよ。頼むぞ。」
そんな想いで一着一着、心を込めて袖を通す。勿論最良のボリオリを選択したつもりだ、アルバーノとして。
(写真は、10年位前にアマンさんからもらった大切にしている貴重な展示会用ディスプレイである。)
お盆も終わり一段落。今年は長かったですね。いろんなドラマがありました。
帰省客との久し振りの再会。遠方から足を運んで下さった方。皆様ありがとうございました。感謝です。満足してもらえたでしょうか。来てよかったと思ってもらえたでしょうか。
前回ブログで書いた様に、アルバーノは「縁」を大切にしていきたいです。
大きなネット社会の必然性はわかりますが、実店舗だからこそ出来る可能性、サービス。いろんな情報をアナログで提供しあえる場所。新旧含めて宝探しを楽しんでもらえるようなカオスな場所。洋服以外のカルチャー、ライフスタイルを提案できる場所。余裕を持って人とのコミュニケーションを大切にしていきたい。
今回も東京から福岡に帰省されるのに、わざわざ富山経由で寄られた方。どんなGAIOLAが入ったのか楽しみに来ました。と、秋冬物たっぷり着てもらい購入されました。丁度来春夏の新作サンプルがあり、誰より早く試着してもらい、感想を聞かせてもらいました。
「こんなの来年でるの?恰好いいじゃないですか。ちょっと新鮮かも。」その言葉が後押しとなり、来春夏の仕入れに迷っていた僕も決心がつきました。
大量のファブリックを見てもらい、好みを聞きました。これは、店でしか出来ない!リアルな意見交換。お客様と僕との充実した時間。大切ですよね。
この時期即戦力の合い物を購入される方が多い中、秋冬モードに突入の方も増えております。
また一人いつもの顔がやってきました。知名度も急上昇「北陸の伊達男」。当然のごとく、いきなりの「あなたも着せ替え人形接客」が炸裂です。まぁ、彼との間柄ですから、あ・うんの呼吸。
営業主任たるもの(前回だけは部長に昇格してました?)僕のセレクトしたNEWコレクションの自信作を着せてみて、コメントを求めます。僕のペースで一着羽織らせては、その間に次に着せる服をハンガーからはずしております。
僕も客観的に見て、一人で納得。「うんうん、恰好イイなぁ。イイでしょう。イイよね?」半ば強引。
「伊達男ちゃん、このパンツはいてみてくれない。ナポリの伝説の職人のだよ。心してはいてね。」勿論彼も悪い気はしない訳で(多分)。
「いや、これいいっすね。吸い付いてくる感じ。脱ぎたくなくなるなぁ。」と、言いながら、自らGAIOLAのNEWダブルジャケットを羽織る。
「くーっ!こりゃ完璧だわ。」ポーズも決まる。秋冬のスタートはこんな感じかな。
買う、買わないはどうでもいい。恰好良いか、どうか。それが大切だ。
店にとって大切なのは、お客様のリアルな声。そりゃ人それぞれですけど、でもネットでは味わえない売り手と買い手のコミュニケーション。そして、共感。
たまには街に出よう。店に行こう。そこには想定外の刺激があるかもしれない。
店長の仕入れの為のモニターにされるかもしれない。店長のありがたい話、どうでもいい話が聞けるかもしれない。
服が気になったら、是非足を運んで下さい。きっとメリットはあっても、デメリットは無いはずですよ。
「縁」。人や物との運命的関係、出会い。目に見えない不思議な赤い糸。
日本人が当たり前の様に使っている言葉。アメリカには、これに相当した表現がないし、アメリカ人には解らないらしい。いろいろなものが「縁」で結ばれて、大きなエネルギーが生まれていく。
20日、あのアルバーノ北海道支店長(ブログ:気ままにクラシコkimakura.net)がやってきた。
フィナモレ、シルヴァーノのピンクのリネンシャツが、ハワイ帰りの彼の焼けた肌に眩しかった。彼との最初の「縁」も、フィナモレのシャツだった。
もう6、7年経つかな。富山から北海道に転勤し、3年近く経つ。早いもんだねぇ。しばし、近況報告。ハワイの土産話をしながら、SALEの宝探し。
前回 春に着た時に試着し、後ろ髪を引かれつつ店を後にして行った、ボリオリの濃紺コットンソラーロのスーツ。丁度彼のサイズが1着残っていた。「縁」である。勿論彼の目が輝いた。
翌日はレンタカーを借りて、富山での思い出の地を回るそうだ。グルメ、隠れ家図書館…、地元民の僕達も知らないストレンジな富山を沢山知っている。縁もゆかりもなかった富山に数年暮らして、生まれた富山との
「縁」。そして、想い。転勤になって離れても、また来たいと思ってくれる。遠い北の地からマメに足をはこんでくれる。嬉しいなぁ。
僕達は、「縁」が運んでくれたお客様の人生を見守り続けている。洋服を通してだけど、社会人になって当店の扉をたたき、服に夢中になる。そのうちに愛する人ができ、守る家庭が生まれる
そんな沢山の人の物語を見てきた。僕達は、彼のこれからの物語を楽しみに、大切に見守っていきたい。
そうこうしているうちに、営業部長(ブログ:北陸の伊達男)が現れた。支店長との再会。ブログでの「縁」だ。支店長のフィナモレ、シルヴァーノのシャツと部長の古いフィナモレ、プルオーバーのシャツの共演。(この時の写真は、伊達男のブログで見られることでしょう。)
スーツ、ジャケットを愛する二人の男の熱い会話。それを嬉しそうに見守る僕がいる。いい光景だな。
富山のストレンジプレイス、洋服屋アルバーノ。僕達も「縁」あって、富山のこの地で商いを営んでいる。沢山のお客様のエネルギー「縁」を吸収して、店は呼吸している。
今日も「縁」で作られた「アルバーノ」というオブジェに、新しい「縁」がまた一つ加わるかもしれない。
街が眠りについた深夜。人けのない商店街の洋服屋の2Fでは、好きなものに囲まれ何かをたくらんでいる男がいる。
コルビュジェのソファ、カスティリオーリのライト、マッキントッシュのアンプ、JBLのスピーカー…。そして、今日はスペシャルなゲストがやってきた。イタリアのヴィンテージファブリック。
元々ファブリックを扱うアルヴェスティさん。ショールームの片隅にあるヴィンテージファブリックが、かねてから気になっていた。念願叶って、今回全て送ってもらった。パッキンにぎっちり詰まった大量のファブリック。血が騒ぎます。一枚一枚取り出し、愛おしく手にとっては、かざして見たり近づけて見たり。
さぁここから、僕のイマジネーションの世界が幕を開けます。
どんなジャケットを作ろうか?どんなデザインのスーツにしようか?
ところが、今日は違うんですよ。洋服が目的じゃないんです。今日は僕の趣味と言ってもいい、インテリアモードなんです。ウインドーと店内のプチリニューアルの為です。インテリアとファブリック?ファブリックは空間作りのいいソースになります。
例えば、カーテンや壁紙、古いソファやスタンドライトのシェードを張り替え。パネルにしてアートにしてもいいし、シンプルにクッションやテーブルクロス。雰囲気作りには欠かせません。
何か面白いことに使えないかな。
イマジネーションを膨らませるには、ジャズです。レコードです。ヴィンテージファブリックには、古いレコードの温かい音がよく合うんです。ブルーノート、ジョニー・グリフィンの刺激的なピンクレッドのジャケットが目に留まりました。ファンキー、ムーディーなサックスの音が五感を始め、体中の器官を刺激します。
なんか脳が躍動してきたぞ。
生地を見ていると、見慣れている生地がでてきました。隠れ家の僕の横にいつも寄りそう観賞用のGi・カプリのジャケットと同じ生地。いや、よく見るとブロックチェックの大きさは、ちょっと違うか。
とにかく今日は洋服モードではないので、洋服では使わないようなインパクトのあるものや変わった柄を探します。こうしている時が僕には至福なんです。
イタリアのウインドーディスプレイ、凝ってますよね。街角にあるショップのウインドーは、競うように自己主張します。街や商店街に伝統と華やかさを醸し出しながら、映画のワンシーンのように人々を魅了します。
今の日本には失われつつある、ウインドーショッピングを楽しむ文化。寂しいなぁ。
アルバーノのショーウインドー、どうしましょうか。洋服屋っぽくない斬新なショーウインドーにしたいなぁ。小さな空間の中にアッという仕掛け、まさにショーを演出したい。
春までにと言いつつ、かなり遅れております。秋には実現させたい。
今日出した写真の中から、いくつかファブリックを選ぶつもりです。どう使われるかはお楽しみに!
道行く人々が、必ず足を止めて釘づけになるような魅力的なショーウインドーにしますよ。そこに僕はこだわりますよ。
最初見た時、RODAらしいポップで斬新な柄のニットにビビビっときました。モードとクラシックな絶妙の間。RODAお得意のお茶目なキャラ。ネクタイブランドらしい柄やチェッカー柄のインパクトが僕のストライクゾーンにズバっときました。色も沢山ありました。選ぶのが大変。この遊び感覚は、ありそうでないぞ。ここは勝負どころだ。時々僕のピンときたらドンと行け。ヒラメキ、キラッ!仕入れが暴走することがあります。それだけ僕の瞳がハートになったってことですよ。
これでも無難な色を選んだんだけど。(赤やグリーンの方が良かったか?)結果が全てです。散々たるものでした。翌年も売り場の片隅にだしてました。反応はなし。触る者なし。
未練たらしく「そんな派手でもないし、こんなクラシカルモードのカッチョイイニットが何故売れないんだ!」ボヤキ、怒り、ため息。
普通のお店では、福袋のネタか。昔聞いた話では、バイヤーが山へ行って一枚一枚川に流すように、上から命令されたらしい。(同じ過ちを二度と繰り返さないように)
アルバーノでは福袋もなければ、そんな川を汚すようなことはしたくないから、GO TO THE蔵です。
時たま壊れて、相当古くから残ってるものを売れ残り自慢します。
「コレ自信持って仕入れたんだけど、全然売れないんですよ。5年位経つかな。スゴイでしょ。」
そういうと、なぜかお客様からクスっと笑いがとれます。もう会話の潤滑油かな。かたいお客様には、使うようにしてます。
今度蔵出しもできない一生蔵モノシリーズでも、ブログネタで笑いでもとりましょうか?
まぁそんな訳で、ヒラメキ、キラッで、勝負をかけたものでも、はずす時ははずしますよ。いつもだったら大変ですけど…もう終わってるでしょうね。
「そりゃこんなニット着ないでしょう。店長!カジュアルのセンスはないの?」
「やっちまったねぇ、ご愁傷様です。ナンマイダーナンマイダー。」
「好きに言って下さい。」
でも、「面白いニットじゃない!RODAにこんなんあったんだ。店長の気持ちわかる。同情するよ。」
「だったら、買って。」
「RODAらしくていいよ。流行りもないし、デニムや流行のカラーパンツに合いそうだし。」「わかってらっしゃるアンタはエライ。」
なんてビビビッときた方いらっしゃいましたら、いつでもお待ちしておりますよ。